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〜 続々・日本に侵入したシマリスたち 〜
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日本中に生息する外国生まれのシベリアシマリス
日本には、シマリスは北海道にしか生息していません。北海道に棲むシマリスはエゾシマリス(シマリス属シベリアシマリス、亜種エゾシマリス)と言って、北海道のほかにはシベリア沿海部や樺太(サハリン)などの地域にも自然分布しています。
ところで、日本では北海道にしかいないはずのシマリスが、1970年頃から本州・四国・九州と、日本各地で見られるようになってきました。下の図表は、大日本猟友会が1980年に実施した聞き取り調査をもとに、山口佳秀先生が描かれたシマリスの分布を示したものです。

聞き取り調査によるシマリスの分布(山口佳秀)
(大日本狩猟会、1982による資料から描く)
出典: 中村一恵編 『特別展 日本の帰化動物』 神奈川県立博物館
1988 p.51
戦後の右肩上がりの高度経済成長のもとで日本人の懐は裕福になり、ペットに対する需要も高まりました。需要が高まれば商売人は目をつけます。とてもかわいらしい上に大量に捕獲することが可能なシマリスがターゲットにされないはずはなく、シマリスはたちまち日本中に広がることになりました。そして、その結果が上の図表でした。現在ショップで売られている子たちは、主に中国から輸入されている外国産のシベリアシマリスです。つまり、日本には分布していなかったチョウセンシマリスやチュウゴクシマリスといった外国産のシベリアシマリスが日本全土で生息するようになったことを示しています。
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北海道のシマリスはエゾシマリスのはずじゃ…
ここでちょっと気になることがあると思います。今、「日本全土」という言葉を使いました。日本全土?日本全土と言えば、北海道も含まれることになります。でも、確か上の図表には北海道は描かれていなかったはずです。なんだかちょっと不安になってきましたね。そうです。上の図表は「シマリスを見た」というハンターの目撃証言を聞き取り調査することによって描かれたものでした。ですので、北海道が描かれているはずがありません。北海道にはシマリスがいて当然なわけですから。
では、北海道では外国産のシベリアシマリスは野生化していないのでしょうか?本州・四国・九州で逃げ出したり、捨てられたりしたシマリスたちと同じ運命をたどったペットのシマリスは北海道にはいないのでしょうか?もちろん、答えは「否」です。上の図表を見て、北海道だけが例外だということを証明することは非常に困難でしょう。北海道にも外国産のシベリアシマリスが生息しているのです。
環境庁自然保護局野生生物課編の『日本産野生生物目録
脊椎動物編』という1993年に刊行された書籍があります。これは、絶滅の恐れがある日本の野生鳥獣を調査するにあたって、日本にいる鳥獣の種または亜種を調査したリストが掲載されているものです。輸入された中国・朝鮮半島産のシベリアシマリスのような外来種や飼育種であっても、現在野生状態で安定的に生息し繁殖している種については日本産の野生動物とみなされています。
この本をみると、1989年現在におけるチョウセンシマリスの都道府県別分布表が載っています。それによると、チョウセンシマリスの分布が確認されたのは以下の25道府県都なっています。
北海道・岩手・福島・栃木・群馬・千葉・神奈川・新潟・石川・長野・静岡・愛知・三重・滋賀・大阪・奈良・和歌山・島根・岡山・広島・徳島・愛媛・高知・熊本・宮崎
出典: 環境庁編 『日本産野生生物目録
脊椎動物編』 自然環境研究センター 1993 p.61
その他の22都府県については《情報なし》となっていますが、分布が確認された上のリストの中にはなんと北海道も含まれています。未確認ですが、噂で聞いた話よると、観光客目当てに北海道民がシマリスを放逐するようなことも少なからずあったりするようです。
■ 北海道からエゾシマリスが消える?!
実は、これは非常に忌々しき問題を含んでいます。侵入した生物はその地でどのような問題を引き起こすのでしょうか。池田透先生は「移入哺乳類の問題点」として次の6つの項目を挙げられています。
1. 商品作物被害などの人間生活への影響
2. 人畜共通感染症の伝播
3. 交雑による遺伝的侵食
4. 競合による在来種の排除
5. 捕食による在来種の減少
6. 植生の改変
池田透「移入哺乳類の現状と対策」
出典: 『遺伝』第52巻第5号 裳華房 1998 p.37-41
外国産のシベリアシマリスが北海道に侵入すると、一番気になるのは
3.
の「交雑による遺伝的侵食」です。エゾシマリスと外国産のシベリアシマリスは亜種の関係にあります。亜種というのは、つまるところ同一種ということになります。誤解を恐れずに言うなら、兄弟みたいなものです。一般的には、種が違うもの同士では一代雑種はできても、二代目は不妊に終わるそうです。しかし、中には交雑して何世代も混血が可能なものもいるというのです。
エゾシマリスと外国産のシベリアシマリスの交雑がどの程度まで可能なのかは知りません。しかし、簡単に交雑ができて、その上、混血が何世代も続くことが可能だとしたら、いつかは北海道から純血のエゾシマリスが消えてなくなってしまうかもしれません。また、交雑がうまくいかなかったとしても、外国産のシベリアシマリスとエゾシマリスが生存競争の関係になって、エゾシマリスが駆逐されないとは限らないと思います。
もし北海道からエゾシマリスの純血種がいなくなったとしても、北海道からシマリスが消えるわけではないんだから別にいいじゃない、というご意見もあるかもしれません。しかし、エゾシマリスと外国産のシベリアシマリスという亜種が生まれるまでには、何百万年、どんなに少なく見積もっても何十万年という膨大な時間がかかっています。日本列島が大陸から独立し、北海道という地にエゾシマリスというシマリスが生き残って生息しているのも偶然で片付けられるものではないでしょう。
私は生物学者でも地質学者でもありません。単なるリス好きでしかありません。単なるリス好きとして言わせていただきます。エゾシマリスくん、いなくならないで!!
■ 北海道のエゾシマリスを守るには…?
エゾシマリスを保護するにはどうしたらいいでしょうか?
まず最初に、放っておいても大丈夫では…ということが考えられるかもしれません。北海道には最初からエゾシマリスしかいなかったわけではなくて、大昔には外国産のシベリアシマリスもいたかもしれない。でも、北海道という地では外国産のシベリアシマリスは根絶し、エゾシマリスに軍配があがったのかもしれない。それだったら、放っておけば外国産のシベリアシマリスは北海道では生きてはいけないのではないか。そういった楽観的なシナリオです。外国産のシベリアシマリスには悪いですが、もしそうであるなら、そうであって欲しいと思います。
次に、外国産のシベリアシマリスを全部捕獲して本国に送り返す、という方法が考えられるかもしれません。ただ、これは100%実行不可能なことですし、もし可能だったとしても、また北海道の広野に外国産のシベリアシマリスが放たれればもとの木阿弥となってしまいます。
結局のところ、純血のエゾシマリスを守るには、外国産のシベリアシマリスが絶対に侵入不可能な場所にエゾシマリスを隔離する、という方法しかないかもしれません。
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北海道に外国生まれのシベリアシマリスを放たないで!
飼い主のレベルで考えると、ペットとして飼っている外国産のシベリアシマリスを北海道で絶対に野生化させない、という努力が必要です。そんなの北海道だけだから不公平だ、というご意見もあるかもしれませんが仕方のないことです。北海道でシマリスを飼っていらっしゃる方は、シマリスを逃がしてしまう、あるいは捨てるという行為は、どんなことがあってもしないで欲しい、そう思います。
ただ、そうは言っても言うは易しでなかなかそうはならないのかもしれません。シマリスの飼育は、誤解されていたり、知られていなかったりする部分がかなりあります。知識さえあれば、飼育を諦めて捨ててしまうことも、逃げられてしまうことも、万が一逃げられた時にも帰還させられないということもなくなるのではないかと思っています。外国産のシベリアシマリスが日本で売られている限り、北海道では、行政がシマリスの飼育方法を学校教育に取り入れるなどして啓蒙していく必要があるように考えています。
幸いなことに、現在北海道でのシマリスの捕獲は環境庁の命令により一時的に禁止されています。これは、期限が到来しても延長すべきでしょう。また、エゾシマリスを守るためにも、シマリスの日本への輸入はその一切を禁止すべきだと思います。
【注】
なお、参考資料に「神奈川県立博物館」発行のパンフレットを使用していますが、同博物館の自然部門は1995年に分離、小田原市入生田に移転し、現在「神奈川県立生命の星・地球博物館」と名称を変えています。
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